富嶽百景・走れメロス他八篇
太宰治が短篇の名手であることはひろく知られているが、ここに収めた作品は、いずれも様々な題材を、それぞれ素材に適わしい手法で描いていて、その手腕の確かさを今更のように思い起こさせる。
表題作の他、『東京八景』『女生徒』『きりぎりす』『駈込み訴え』『魚服記』『ロマネスク』『満願』『八十八夜』を収録。
敗戦直後の没落貴族の家庭にあって、恋と革命に生きようとする娘かず子、「最後の貴婦人」の気品をたもつ母、破滅にむかって突き進む弟直治。
滅びゆくものの哀しくも美しい姿を描いた『斜陽』は、昭和二十二年に発表されるや爆発的人気を呼び、“斜陽族”という言葉さえ生み出した。
同時期の短篇『おさん』を併収。
「恥の多い生涯を送って来ました。
自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです」――世の中の営みの不可解さに絶えず戸惑いと恐怖を抱き、生きる能力を喪失した主人公の告白する生涯。
太宰が最後の力をふりしぼった長篇『人間失格』に、絶筆『グッド・バイ』、晩年の評論『如是我聞』を併せ収める。
中原を理解することは私を理解することだ、と編者はいう。
こうして飽くなき詩人への追求が三十余年にわたって続く。
ここにその成果を総決算すべく、中也自選の『山羊の歌』『在りし日の歌』の全篇と、未刊詩篇から六十余篇を選んで一書を編集した。
読者はさまざまな詩に出会い、その底にある生の悲しみに心うたれるに違いない。
かつては厭わしさのみを感じたが、10年ほどしてあらためて読み直すと、倨傲で偏狭と見えた彼の性癖の1つ1つが、かえってその人間としての弱さや正しさの証しと見え、しみじみと心に迫ってくる親しみを覚えた、と青果(1878-1948)は言う。
好悪をむきだしにして迫りながら、あくまでも客観性を失わない渾身の馬琴伝。
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